インサイドセールスのコツ:戦略設計
まずは、自社が成果を出すために、インサイドセールスの戦略設計を行う必要があります。戦略設計におけるコツは、以下の3点です。
- マーケティングとフィールドセールスとの役割分担を明確にする
- カスタマージャーニーに合わせたシナリオを設計する
- 適切なKPIを設定する
本章では、上記の戦略設計のコツについて解説します。
マーケティングとフィールドセールスとの役割分担を明確にする
インサイドセールスの主な業務内容は、リード(見込み顧客)のナーチャリング(育成)とクオリフィケーション(選別)、そしてアポイント獲得です。具体的には、マーケティングが獲得したリードを引き継ぎ、購買意欲を高めるために適切なコミュニケーションを取って信頼関係を深め、受注確度が高まった見込み顧客を見極めてアポイントを獲得して商談を創出します。
このように営業プロセスを分業している場合、インサイドセールスはマーケティングとフィールドセールスの橋渡しのような位置になります。しかし他部門との役割分担が明確になっていないと、業務範囲が不透明になり、効果的な戦略を立案できません。
また、役割分担ができていないとマーケティングやフィールドセールスとの連携もうまくいかなくなり、インサイドセールスが失敗する原因にもなります。
まずは、インサイドセールスがどのような役割を担うのか、どのような業務を担当するのか、といった分担を明確にしましょう。
カスタマージャーニーに合わせたシナリオを設計する
すべての見込み顧客が同じような購買意欲であるわけではありません。自社商材を認知したばかりの見込み顧客と、競合製品と比較検討段階の見込み顧客では、購買意欲に差があります。当然ながら、購買意欲に応じて求めている情報も異なるため、インサイドセールスはリードに合わせた情報提供が必要です。
そのため、インサイドセールスはカスタマージャーニーを把握したうえで、アプローチのシナリオを設計することが成功のコツとなります。
カスタマージャーニーとは、見込み顧客が製品・サービスを認知して購入するまでのプロセスに応じた、行動や思考の変化のことです。認知したばかりの段階、情報収集の段階、競合製品との比較の段階、社内での検討の段階など、リードの複雑な購買プロセスをたどって購入・契約に至ります。
どの段階のリードも抱えている課題やニーズを把握したうえで、提供する情報の内容やアプローチの方法などのシナリオを検討しましょう。
適切なKPIを設定する
インサイドセールスを成功させるためには、適切なKPIを設定して検証していくことも重要です。インサイドセールスのKPIとして多くの企業で用いられているのは、以下の指標になります。
- 架電数
- 担当者に電話がつながった件数
- メール送信数
- メール開封数・率
- ヒアリング数
- アポイント打診数・率
- アポイント獲得数・率
上記はインサイドセールスのアクションに関わるKPI指標です。十分な量のアプローチができているか、担当者によってアクションの数や成功数に差が生じていないか検証できます。
また、以下の指標もKPIとして設定することが多く見られます。
- 受注数
- 受注率
- 受注金額
これらは受注に関わるKPIのため、フィールドセールスが重視すべき指標です。しかし、インサイドセールスが効果的な施策を行い質の高い商談を創出できていれば、受注数や受注金額などが向上するため、インサイドセールスの施策の効果を評価するために見るべき指標と言えます。
インサイドセールスのコツ:実践
次は、インサイドセールスを実践していくうえで重視すべきコツを解説します。
- トークスクリプトやメールテンプレートを用意する
- 事前に情報を収集して仮説を立てる
- ヒアリングに力を入れる
- 適切なツールを活用する
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
トークスクリプトやメールテンプレートを用意する
実践にあたり、電話で活用できるトークスクリプトや、メールを送信する際に活用できるテンプレートを事前に用意しておきましょう。トークスクリプトやメールテンプレートがあると、話す内容やメールの文章を一から考える必要がないため、業務効率化につながります。また、チーム内の全員の業務が標準化され、担当者ごとの対応品質の差を解消できるでしょう。
トークスクリプトやメールテンプレートを作成する際には、成果を出している担当者がよく使っているセールストークや、リードからの反応が良かった内容を盛り込みます。社内のナレッジを活用することで、より効果の高いトークスクリプトやメールテンプレートが作成可能です。
また、複数のパターンを用意しておくと、焦らずに対応できます。たとえば、電話でアプローチする際には「担当者につないでもらうためのトークスクリプト」「担当者にヒアリングする際のトークスクリプト」「担当者に断られそうになったときのトークスクリプト」など、あらゆるシーンを想定して用意しておくと安心です。
事前に情報を収集して仮説を立てる
見込み顧客アプローチする前に、まずは情報収集をして仮説を立てましょう。事前情報が何もないままアプローチすると、効果的なセールストークや提案を展開できず、購買意欲を後押しできません。そのため、見込み顧客が抱えている悩みや解決したいと思っている課題についてある程度の仮説を立てておくことです。そうすることで、効果的なアプローチ方法を準備してからアプローチできます。
まずは、企業のWebサイトやプレスリリース、業界内のニュースを調査し、企業の動向や業界特有の商習慣などを理解しておきましょう。情報が豊富なほど、仮説を立てる際に役立ちます。
こうした情報から、見込み顧客がどのような課題を抱えているのか、どのような情報を求めているか仮説を立てます。そして、その仮説に沿った提案資料やキャンペーン情報などを用意しましょう。
また、仮説を立ててからアプローチすると、見込み顧客との信頼関係構築がスムーズになる効果も期待できます。たとえば「御社について調べさせていただいたのですが、御社は〇〇というサービスをご提供されているため、エンドユーザーは△△といった層ではないでしょうか。その場合、~~という課題をお持ちではありませんか?」と、リードに合わせてアプローチできるため、リードは「うちのことをよく調べてくれている」と感じて信用してくれるようになるでしょう。
もちろん、仮説が正しいとは限りません。仮説が間違っていたときには、リードから正しい情報を聞き出して、柔軟に軌道修正します。
ヒアリングに力を入れる
営業活動では「アポイントを取りたい」「自社サービスをアピールしたい」という思考になり、営業色が強くなりやすい傾向にあります。しかし、こうした営業は押し売り感が出やすくなり、見込み顧客に不信感を抱かせてしまうため信頼関係を構築できません。
見込み顧客との距離を縮めるためには、話してもらうことが重要です。適切な質問を投げかけて、話しやすい雰囲気を作り、ヒアリングに力を入れましょう。
また、ヒアリングに注力することで、現状や課題、理想とする将来像など、さまざまな情報が得られる可能性があります。ヒアリングで得た情報は、次の一手を考えるときに大いに役立ちます。見込み顧客のニーズにマッチしたアプローチができるため、リードは「自分のことをよくわかってくれている」と感じてさらに信頼を獲得できるでしょう。
適切なツールを活用する
インサイドセールスは、見込み顧客と継続的にコミュニケーションを取って信頼関係を構築し、受注確度を高めていく役割です。そのため、顧客情報やアプローチ履歴など、さまざまな情報を扱う必要があります。
そうした情報を蓄積するのに役立つツールとしては、SFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理システム)があります。SFA/CRMは、顧客情報やアプローチ履歴、取引履歴など、営業活動に関わるさまざまなデータを一元管理できるツールです。いつ・どのようなアプローチをしたか、リードの反応はどうだったか、そのアプローチがアポイント獲得につながったか、といった情報を管理できるため、フィールドセールスにリード情報を引き継ぐ際にも活用できます。
また、架電業務を効率化するCTI、メールによるアプローチに活用できるメール配信システム、資料や画面を共有できるオンライン商談システムなどもおすすめです。
こうしたツールを活用してリードとの購買意欲を後押ししていくことが、インサイドセールス成功のコツと言えます。
インサイドセールスのコツ:運用
インサイドセールスは、日々運用を続けていくことで成果が向上します。運用面でのコツは、以下の通りです。
- PDCAサイクルを回す
- 保留や失注の案件も再アプローチする
- メンバーのノウハウやナレッジを共有する
それぞれの内容について解説します。
PDCAサイクルを回す
KPI指標をもとにインサイドセールスの活動を効果検証し、問題点を見つけて改善していき、PDCAサイクルを回しましょう。PDCAを回していないと、効果のない施策をずっと続けることになるため非効率です。
あらかじめ作成したトークスクリプトやメールテンプレートの効果を測定したり、ヒアリング項目がフィールドセールスの役に立っているか検証したりして、施策をブラッシュアップしましょう。
また、PDCAを回すことで、担当者の頑張りを可視化できます。一人ひとりのアクション数や受注につながった件数などからその担当者がどれだけ成長したか判断でき、スキルや頑張りを評価できるでしょう。
保留や失注の案件も再アプローチする
見込み顧客とやり取りしていると「検討しておきます」「今は必要ありません」などと言われ、保留や失注となってしまうこともあります。インサイドセールスは日々多くの新たな見込み顧客にアプローチしているため、保留・失注リードは後回しになりがちですが、そうしたリードにもタイミングを見て改めてアプローチすることで再び接点を持てるかもしれません。
たとえば「予算が厳しいため導入は難しい」と断られても、時期が開けてからアプローチすると「今は予算があるため、前向きに検討したい」という反応が得られることがあります。保留や失注になっても諦めず、継続してアプローチしていくことがインサイドセールス成功のコツです。
メンバーのノウハウやナレッジを共有する
インサイドセールスを成功させるためには、社内のナレッジや成功事例を共有することも重要です。
営業活動が属人化してしまうと、担当者によって保有しているノウハウやナレッジが異なるため、成果にも差が生まれてしまいます。しかし、成果につながるナレッジや、見込み顧客からの反応が良かった成功事例などを社内で共有することで、誰でも成果を出すことができる仕組みを構築できます。
ナレッジや成功事例を共有するには、ナレッジベースやグループウェアで情報を共有したり、マニュアル作成ツールでマニュアル化したりすると良いでしょう。
インサイドセールスを成功させるための5つのスキル
インサイドセールスを成功させるためには、組織的な取り組みだけでなく、担当者一人ひとりのスキルアップも求められます。そこで本章では、インサイドセールスを成功に導く5つのスキルを紹介します。
非対面でのコミュニケーションスキル
インサイドセールスは、電話やメールなどを活用した非対面の営業手法です。非対面は相手の表情やその場の空気感でコミュニケーションを取ることができないため、信頼関係を構築しにくい傾向にあります。
たとえば、電話の場合は相手の声色や話し方から温度感を読み取らなければなりません。自分自身も、相手に信頼感を与えられる話し方を意識したり、相手が話しやすい空気感を作り出す工夫をしたりすることが必要です。
対面よりもコミュニケーションの難易度が高いため、電話やメールなど非対面でもコミュニケーションを取ることができるスキルが求められます。
非対面でのコミュニケーションスキルを上げるためには、トークスクリプトを整備するだけでなく、ロールプレイングをしたり電話内容を録音したりして、自身の話し方を客観的に分析しましょう。
ヒアリングスキル
インサイドセールスは、見込み顧客の購買意欲やニーズに応じた情報を提供しなければなりません。そのため、適切なヒアリングをして情報を聞き出すことがポイントです。
ただ質問ばかりでは、相手に不信感を抱かれる原因になります。「あなたの役に立ちたいから、あなたについての情報を知りたい」と、寄り添った姿勢でヒアリングをすることで、円滑に情報を引き出せるでしょう。
継続して取り組むスキル
インサイドセールスは、初めのうちは断られることも多く、すぐに成果が出るわけではありません。そのため、施策の効果を検証し、ブラッシュアップして成果を高めていくことが重要です。長期的な視点で継続して取り組めるスキルを持っていると良いでしょう。
また、保留・失注リードにも、再度アプローチを行うことも珍しくありません。一度断られても挫折することなく、継続して挑戦することがインサイドセールスを成功へと導くでしょう。
データ分析スキル
アプローチの履歴ややり取りの履歴などのデータから、受注確度を見極めなければなりません。多角的な視点からデータを分析して見込み顧客の受注確度を判断するため、データ分析スキルは必須と言えます。
データを分析するためのツールを使いこなすスキルも必要です。以前はExcelなどの表計算ソフトで分析することが一般的でしたが、最近ではSFAやCRMなどにも分析機能が充実しているため、ツールを使いこなしてデータ分析を効率化しましょう。
チームワーク
インサイドセールスは、マーケティングから引き継いだ見込み顧客をフィールドセールスへとトスアップする役割です。マーケティングとうまく連携できなければ適切なアプローチができません。また、フィールドセールスと連携できないと商談で活用できる情報を引き渡すことも困難になります。
インサイドセールスと他部門の連携が、受注につながるかどうかを左右すると言っても過言ではないため、チームワークは必須です。
まとめ
インサイドセールスを成功させるためには、「戦略設計」「実践」「運用」という3つのポイントでの工夫が必要です。本記事でお伝えしたそれぞれのコツについて参考にして、インサイドセールスを成功へと導きましょう。
また、インサイドセールス担当者のスキルアップも、成功するためのコツの一つです。適切な人材育成プログラムを策定し、スキルアップを実現しましょう。